本屋さんでタイトルを見て「これは面白そう」と思い買った本である。ただ
買ってから1年近くたってしまってから読んだ。内容は「渋滞」について。
タイトルにある通りである。ただ、「渋滞」について学問的に扱っており、
単なるエッセイとは異なる点が面白い。学術書よりも一般向けに書かれており
わかりやすい。渋滞については、誰でも興味があると思う。特に、混雑時期の
高速道路などもどうして渋滞になるのか、と疑問に思ったりしたり、朝の駅
構内なども、うまく人が流れているのが興味深かったりする。また、渋滞も
波のように伝播していったりするため、どうなっているのか、と興味を持って
いた。
この本では、渋滞をセルオートマトン法のひとつASEP(エイセップ、
非対称単純排除過程、Asymmetric Simple Exclusion Process)というモデルで、
いろいろ検討し、分析をしている。これは、粒子が移動するときを考えたときに、
自己駆動と排除体積効果をいれた単純モデルとなっている。簡単に言えば、
例えば、マスがたくさんあり、その中にボールが入っていたとする。次の時間に、
ボールが一つずつ前に進み、かつ、現在ボールが入っているマスには入ることが
できないとする。これをシミュレーションしていく。この現象は、ほとんど渋滞と
同じになる。詳しくは本を読んでもらいたい。
こういうモデルでシミュレーションし、渋滞を検討していく。そうすると、モデル
のシミュレーション結果と実際の状況が一致してくる。その場合、シミュレーション
のパラメータをいじってあげることで、実際の現象の問題が見えてくる。例えば、
渋滞において、車の台数を増やすことをすると、臨界密度や安定状態が見えてくる。
それを超えると渋滞するし、その手前では渋滞が起こらない。高速道路などでの
臨海密度は車間距離が40m以下のときらしい。
人の流れも渋滞学と言えるそうだ。群衆にも3種類「会衆」(受動的関心が集まって
いる群衆)、「モッブ」(直接暴力的に働きかける群衆)、「パニック」(混乱)が
あるそうで、火事等で逃げようとするときを考えると、建物の避難路の設計や、店員
のリーダーシップが重要であることがわかるようだ。その他、入り口のあたりにうま
く障害物を置くと、人が流れやすくなる等が、シミュレーションからわかる。
この本の面白い点は、役に立ちそうなところにある。例えば、お店の待ち時間がある。
これはリトルの公式と呼ぶそうだが、
待ち時間=待ち人数÷人の到着率
でわかるそうだ。人のはけ時間などを考えればそうなのだが、考えてみないと、
思い出せない。お店で並んだときは今度、考えてみたいと思っている。
また電車が遅れると、よく、「時間調整のために5分間停車します」などと言って
後ろの電車の遅れのせいで、電車が止まったりすることがある。これは、電車の
ダンゴ運転をさけるためのやり方だそうで、こうしないと、後ろの電車には、
どんどん人がたまるため、電車がますます遅れてしまう。バスだと、たまに、
どどっとバスがきて、その後、こない、ということがあるが、それと同じ現象と
なってしまう。それを防ぐために、「時間調整」をするわけだ。何となくわかって
いたが、この本を読んですっきりわかった気がした。
その他、この本では、バラバシのスケールフリーネットワークであったり、
神経のネットワーク、インターネットのネットワーク(パケット)などを
解説しているため、渋滞学の切り口から、幅広く紹介されている。このあたり
の部分は,知っていたために、なるほど、と思う感じであった。
この本の知識は生活に使える日常の疑問を解く知識であり、結構、楽しい。
雑学とも言えるが、日々、世の中を観察するときにも参考になるし、シミュレーションで
解けるという点も面白く、いろいろな分野に応用できそうな気がする。

渋滞学 (新潮選書)
西成 活裕
新潮社 2006-09-21